銀河帝国

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【WIZ】第十六話「迷宮行商人エル」

迷宮の深部をたった一人で歩く男がいた。
暗闇が支配する空間を、音も気配もなく滑るように進んでいく。凶悪な魔獣らも彼の前を遮ろうとはしない。

鉄仮面。

泣いているようにも、見ようによっては怒っているようにも見えるその仮面は、緑や朱を基調にした独特の服やひしゃげた頭巾、片手に持つ不思議な杖らしきものらの醸し出す雰囲気からして、彼をその職業である行商人というよりはむしろ道化師のように見せていた。

彼の名はエル。

エル・フラックという。

エルは、そのまま音も気配もなく姿を迷宮の主の部屋へと滑らせた。


狂魔王ツウェドリ。

蒼黒き甲冑を纏ったその王は、彼の魔術に必要な品々を納めているエルを迎えていた。その一つを手に取り口を開く。

「相変わらず仕事が早いことだ。フ、品もいい」
「おほめに預かり光栄です。陛下」
「フフフ…貴様は前からそうだ。慇懃にしてかつ誰にも属し靡かぬ…」
「恐縮です」
ツウェドリは剣を抜き、エルの首横へと当てた。エルは微動だにしない。
「冒険者相手の商いも始めたそうだな?」
「はっ」
このような時に、表情や素心を隠してくれる仮面は有り難いとエルは思う。
だが間もなくツウェドリは踵を返す。
「せいぜい奴らを助けてやるがいい。余とてしばし飽いた。人も獣も魔すらも…生きながら裂いての反応は大して変わらぬ。…クックック」
エルは息を飲む。狂魔王の視線の先には、背丈にも足らぬほどの小さな岩牢に入れられている少女が苦しそうな寝顔を見せていた。リルガミンの現女王、デメテルである。なにかうわごとを言っているようだがエルのいる位置からはよくわからない。なにかを拒絶しているようにも見える。

「…それでは私はこれにて」
仮面の男は再び音も気配もなく姿を消した。


地上リルガミン。

ぼったくる商店のあだ名を持つボルタック商店の店先に、その男エルはいた。
「おやっさん、少しくらいは負けてよー。同業者のよしみでさー」
屈託のない笑顔を見せるその青年は、迷宮にいた道化師とはまるで似ても似つかない明るさを見せていた。片手で玩んでいる黒く四角いオモチャのようなものがさらに彼を軽妙に見せている。
「ダメですよお客さま。どなたでも平等に品物はお売りしておりヒイキは致しません。それが当店のモットーでございます」
ボルタック商店の主はいつもの作り笑いを浮かべて、エルの願いをあっさりと断った。目は笑っていない。
「えーしょうがないなー」
エルが困ったような顔をするところに、後ろから別の客が姿を見せた。店主が応対に顔を向けたが、百戦練磨の店主も少し驚いてしまった。
「はい、いらっしゃいませ…!」
「少し失礼させていただきます。この青年に用があるもので」
「はい…ゼフロス様」
後ろから現れたのは、女王がかどわかされた後リルガミンの政治を代行している宰相ゼフロス・フォルトゥーナだった。
「やれやれ…宰相様がしがない行商人のおいらに何の用だい?」
日頃から目利きには自信のあるボルタックの店主は、エル青年の顔が微妙に変わったことを見てとりさらに驚く。
「そう言わないでくれよ。実は遠国のサルファーンの王太子をお招きしているのですが、ご退屈なようでね…きみの体術を見せてあげて欲しいのです」
「フーン…遠交近攻、ね」
ゼフロスは何も答えない。ただ今のリルガミンに他国を攻める余裕がないことは確かだ。
「いいよ…ゼフロスの頼みだもんね。でもギャランティははずんでよ?」
帽子を被ったエルの顔は、いつの間にか仮面の表情のように変わっていた。
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  1. 2009/08/12(水) 14:45:50|
  2. ワードナ
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